綴る阿呆

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【第1回:高校化学の解説】化学平衡とは何か?

私は大学院で化学を専攻した。その経験を活かして,高校レベルの化学を解説してみたい。現役の高校生に限らず,化学を教える大学生・教師や,化学製品を扱う文系ビジネスマンにも参考になれば幸いである。

 

さて,今回は「化学平衡」について解説する。私が高校時代,特に苦手だったのが,この「化学平衡」と「反応速度論」の2つである。後者については,また別の記事で解説したい。

参考書で,化学平衡の項目を見てみると,やたら複雑な公式が書いてあって,ちゃんと読む前から,なんだか難しそうだなぁという気にさせられる。

けれども,化学平衡のエッセンスは,別に難しい話じゃない。皆さまが,公式を覚えたり (実際は暗記する必要は無いけど),練習問題に取り掛かったりする前に,まずは化学平衡の要点をお伝えしたい。

 

私の手元にある参考書によれば,化学平衡とは,

化学反応の多くは,正反応と逆反応が両方とも起こる可逆反応である。可逆反応は,時間がたつと正反応と逆反応の速さが等しくなり,見かけ上反応が止まった状態になる。この状態を化学平衡という。

(妻木貴雄『総合的研究 化学』263頁)

である。十分に理解できた方は,以降の記事を読み進める必要はない。そうでない方に向けて,この文章をかみ砕いていきたい。

 

まず,たとえ話から始めよう。とある学校のクラスに,男子20人と女子20人がいるとしよう。そして,最終的に,クラス内で5組のカップルが出来たとする。これは別に不自然なシチュエーションではないだろう。

ここでいきなり化学の話に戻すが,大雑把に言えば,化学平衡というのは「最終的に何組のカップルで落ち着くか」という話なのである。ちょっと唐突すぎて,分かりにくいだろう。そこで,化学の言葉で説明し直していこう。

物質Aと物質Bは,合体して物質Cになれるとする。式で書くと,A + B → C となる。
では,物質Aを20個,物質Bを20個,混ぜ合わせるとしよう。ここでの重要なポイントは,「物質Aと物質Bが合体できるからといって,全部が全部合体して,Cに変わるとは限らない」ということだ。それは,男子20人と女子20人がいるからといって,カップルが20組できる訳じゃないのと同じである。

もちろん,物質Aと物質Bの組み合わせによっては,全部反応してCになる場合もある。半々ぐらいで反応がストップする場合もあれば,Cがほとんど出来ない場合もある。要するに,A + B → C と一口で言っても,その反応が「最終的にどの割合まで進んでストップするか」が変わってくるのだ。だから,最終的にストップして安定になった状態(=平衡状態)を考える必要がでてくる。"平衡"とは聞きなれない言葉だと思うが,要は"バランス"という意味である。

初めにクラスのカップルの人数で譬えたが,人と化学反応とで違うのは,この平衡状態は (濃度や温度,圧力などが変わらない限り) 変わらないという点である。 ちょっと分かりずらいだろう。だが,ここも非常に重要なポイントである。つまりは,カップルの人数で言えば,一旦5組で落ち着いたら,その5組という数は永遠に変わらない,ということである。いや,永遠にというのは語弊がある。それは,濃度や温度といった条件を変えれば,カップルの人数 (平衡状態) も変わるからだ。これには"ルシャトリエの原理"なるものが関係してくるのだが,こいつに関しては,また別の記事で解説したい。

 

さて,ちょっと前に,反応が最終的に"ストップ"する状態と書いてしまったが,これは誤解を招く表現である。何故ならば,反応は決して停止した訳ではないからだ。

またカップルの話で恐縮だが,男女は付き合うこともあれば,反対に別れてしまう場合もあるだろう。化学についても,それと全く同じである。

つまり,A + B → C という反応が進むと同時に,A + B ← C という逆の反応も起こりうるのである。 平衡状態では,実はA + B → C」と「A + B ← C」という正反対の反応の速さが同じになっているため,見かけ上は反応がストップしているように見えるのである。これも非常に重要なポイントだ。

 

ここで,「A + B → C」と「A + B ← C」が,どちらも進みうる反応のことを可逆反応と呼ぶ。「A + B → C」しか進まない反応もある。その場合は、最終的には全てCに変化することが分かる。だから、化学平衡については考えなくて済む。このような「A + B → C」の一方向しか進まない反応を,不可逆反応と呼ぶ。これは良くも悪くも,付き合ったら一生別れられないカップルのようなものである。つまり、その反応が可逆反応でなければ、化学平衡を考える必要はない。もう少し用語の解説をしていくと,可逆反応で,右向き→に進む反応を正反応,左向き←に進む反応を逆反応という。

 

では,ここで冒頭で紹介した参考書による化学平衡の説明を再度提示したい。

化学反応の多くは,正反応と逆反応が両方とも起こる可逆反応である。可逆反応は,時間がたつと正反応と逆反応の速さが等しくなり,見かけ上反応が止まった状態になる。この状態を化学平衡という。

(妻木貴雄『総合的研究 化学』263頁)

 どうだろうか。「今度は理解できた!」という方がいたら,非常に嬉しい。要するに,化学平衡とは「化学反応がどれくらい進んで落ち着くか」という話なのである。

 

本記事では,化学平衡のエッセンスを解説させて頂いた。なんとなく要点は掴んで頂けただろうか。また後日の記事で、化学平衡について、さらに詳しく説明していきたい。具体的には、平衡状態をどうすれば変えられるかという"ルシャトリエの原理"や,平衡状態を数式で考える"平衡定数"についてお話したい。

 

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