綴る阿呆

此処には阿呆な話しかない。

ブラックなバイトなんて,今すぐバックレろ

バイトをバックレるなんて,社会的にアウトだ,と大人たちは言う。
だが,私は声高に言いたい。ブラックなバイトなんて,迷わずバックレろ。

大学一年生の頃,3カ月ほど個人経営の居酒屋でバイトしていた。そこが,ブラックだった。具体的にブラックなポイントを挙げると,
・タイムカード打刻後も30分~1時間程度雑用をさせられる。
・22時以降の賃金割増が無い。
・時給は,その都道府県の最低賃金
・体育会系で,ひたすら大声を上げさせられる。
・店長からのパワハラ (一度殴られたこともある)。  等

しかし,働いていた当時は,そこがブラックだという認識は無かった。初めてのバイトだったこともあり,「働くとはこういうものなのか」と思い込んでしまった。苦しいのは,怒鳴られるのは,全て自分の能力不足が原因だ,そう思いつめていた。その頃は,私の人生の中で,最も憂鬱な日々だった。ある日,うつ病診断テストをやったら,「中程度~重度のうつ状態」と診断された。精神科を受診しようかと,何度も迷った。正式に「うつ病」と診断されれば,辞める言い訳になると思ったからだ。

最終的には,店長に「精神的に限界なので辞めます」とメールを一本送り,半ばバックレるようにして,そこを辞めた。返信は無かった。2万円ほど未だ給料が支払われていなかったが,それでも良かった。それよりも早く解放されたかった。それ以降,その土地を去るまでの約5年間,私はその店の前を通ることが出来なかった。周囲の人々の会話の中で,その店の名前が出てくるだけで,動悸を感じた。

私の経験から言わせて頂くと,ブラックなバイトなんて,迷わずバックレてしまえば良い。良心を痛める必要などない。今更礼など尽くす必要も無い。向こうもそれ相応の事をしてきたのだ。文句を言われる筋合いなど無い。何よりも,自分の身と心を守ることが先決だ。ブラックバイトに苦しんでいる人には,今すぐ辞めることを強く勧める。世の中には,探せばもっと楽な仕事が沢山ある。それに,苦しい仕事=自分の為になる仕事では無い。苦しい仕事=他人の為になる仕事という訳でもない。ブラックなバイトで得をするのは,そこの経営者だけだ。バイトさえ務まらないのに,社会人としてやっていけるのか,と自信喪失する必要は無い。今の私は会社に勤めているが,学生時代のブラックなバイトの方が何倍も辛かった。ブラックなバイト先で働いていた頃に,「君は仕事が出来ない訳じゃない。間違っているのは君では無く,バイト先の方だ。今すぐ辞めて良いんだ」と言ってくれる人がいたならば,どれほど救われたことだろうか。

さて,ブラックバイトを経た私は,働くことに対する価値観が大きく変わってしまった。それまでは,自分の好きなことを職業にしたい,そう思っていた。しかし,ブラックバイトを通じて,私の中で「働く=辛い」という認識が定着してしまった。それならば,「好きなこと」よりも「自分が出来ること」を仕事にしよう。そして,出来る限り,楽に生きよう。楽しく生きるのでは無く,楽に生きよう。そう思うようになった。

それからというものの,私はリスクを回避することを第一に,進路を選択するようになった。入学当時に興味があった研究分野がある。しかし,その分野では,就職するのが厳しいことを知った。私は,その分野の研究室を選ばず,学科で最も就職が強いといわれる研究室へと入った。今私が従事している仕事も,「自分がやりたい仕事」というよりも,むしろ「自分に出来る仕事」だ。

正直なところ,この選択が良かったのかどうか,分からない。自分がやりたい研究分野に進み,やりたい仕事を選んだところで,自分が幸せになったとは限らない。しかし,もし私があのブラックバイトを経験していなければ,自分の人生は大きく変わっていたのではないか,なんてふと思う。あの経験が,自分にとって大きな岐路であったことは間違いない。

今からでも好きなことを仕事に出来るのではないか,そう夢見る自分がいる。一度きりの人生,このままで終わってたまるか,という思いもある。しかし,その度に,「そんなのお前には無理だ」という囁きが聞こえる。私は今もなお,ブラックバイトの呪縛に囚われている。