綴る阿呆

此処には阿呆な話しかない。

残業が無くならないのは,「残業」という言葉の響きがかっこいいせいだ。

ゴキブリが嫌われるのは,「ゴキブリ」という言葉の響きが悪いせいだ。
だから,「ゴキブリ」の代わりに,「せせらぎ」とでも呼ばれていれば,話は違っていたはずだ。
そんな会話が,伊坂幸太郎の小説にあった。
これと同じく,残業が無くならないのは,「残業」という言葉の響きがかっこいいせいだ,と私は思う。


昨日,同期との飲み会があった。
4月に入社してから,5カ月弱。
誰と話をしても聞かれるのが,「どれくらい残業してる?」ということだ。
会社には当然ながら忙しい部署と暇な部署がある。
配属先によって,何十時間も残業している奴もいれば,全く残業していない奴もいる。
幸運なことに,私は後者だ。

話題は,その場にはいないA君の話になった。
A君は社内でも激務と噂される部署に配属された。
同期の一人が,
「A君はもう月に60時間も残業してるらしい」
と言ってきた。

月に60時間も残業。
忙しい部署に配属されて可哀そうだ。
そう思う一方で,ふつふつと湧き上がるのは,畏敬の念。
私は未だに残業0。仕事ぶりも,まだまだ一人前とは言えない。
それに対してA君はどうか。既に戦力として認められている。その証拠が,月60時間の残業だ。

私も負けていられない。
来月から,残業しよう。

私が仕事熱心な人間だったならば,そう思ってしまっただろう。
その場でA君の話を聞いて,劣等感を覚えたのは私だけでは無かったはずだ。

だが、ふと思った。
「残業することがすごい」と思ってしまうのは,「残業」という言葉の響きがかっこいいせいではないか,と。

「ざんぎょう」という響きに惹かれるのは私だけだろうか?
てか「ざん」から始まる言葉全般,かっこよくないっすか?
残像とか,斬魄刀とか,ザンビアとか,ザンギエフとか。

仮に残業を,「ざんぎょう」の代わりに,「にゃんぴょう」と呼んでいたら,どうだろうか。
「A君はもう月に60時間も"にゃんぴょう"しているらしい」

途端にA君から,"仕事が出来る有能な奴"感が消え失せる。
そして,代わりに"時間内にこなせない無能な奴"という雰囲気がふつふつと漂ってくる。

日本政府にはぜひとも,働き方改革だの云々言う前に,まずは「残業」を「にゃんぴょう」に変えることから,始めて頂きたい。そうすれば,残業0。否,にゃんぴょう0も夢では無い。