綴る阿呆

此処には阿呆な話しかない。

読書日記(2018/9/2-9/8)

前々から読みたいと思っていた,ヘルマン・ヘッセの『デーミアン』を遂に読んだ。主人公の少年・シンクレアが,大人びて超然としたクラスメイト・デーミアンの影響を受けつつ,成長していく話。シンクレアとデーミアンの関係は独特で,友情とも師弟関係とも言えない。エヴァンゲリオンのシンジ君とカヲル君の関係に近い。「大人達や他のクラスメイトは分かってくれない。だが,アイツだけは理解してくれる」という感覚は非常に共感できる。古典作品ながら,古さを全く感じさせないのは,青年とは今も昔も本質的には変わらないからなのだろう。

デーミアン (古典新訳文庫)

デーミアン (古典新訳文庫)

 

ブルーバックスの『記憶の仕組み (上)』を読んだ。記憶をテーマとした短編小説を書いてみようと思い立ち,図書館で借りてきた本。教科書的な一冊で,よく言えば体系だっているが,悪く言えば面白みに欠ける。「記憶のしくみ」というタイトルだが,上巻はむしろ記憶というシステムの持つ性質に関する記述が多い。例えば,同じ刺激を反復すると馴化する等。記憶のメカニズムが,ニューロン同士のシナプスの強度やパターンに由来するというのは,なかなか信じがたい。コンピュータが0と1のパターンで,あれほどの事を成し遂げることも凄いが,人間の脳というのもやはり凄いものだ。 

記憶のしくみ 上 (ブルーバックス)

記憶のしくみ 上 (ブルーバックス)

 

昼休みも本を読んでばかりで,会社ではすっかり読書家キャラが定着してしまった。最近,夏目漱石の『坊っちゃん』が面白かったと同期に言われた。読書キャラのくせに『坊っちゃん』も読んだことが無い,というのはさすがに恥ずかしく,あわてて私も読んだ。一つ一つのシーンや会話がコミカルで面白い。森見登美彦の小説に似た面白みを感じた。終盤で,坊っちゃんが野だいこに生卵をポコポコと投げつけるシーンなど,まさに森見登美彦的だ。勧善懲悪の体裁を取ってはいるが,結局のところ,善なる坊っちゃん山嵐,うらなりは,最終的に職を失ったり,左遷されたりする。そこに,夏目漱石の人間社会に対する諦念や遣る瀬無さを感じた。

坊っちゃん (新潮文庫)

坊っちゃん (新潮文庫)

 

最近,悪い夢を見た。とても怖かったと同時に,「これを小説できたら面白いんじゃないか?」と思えるくらい,面白い夢でもあった。これをきっかけに,ホラー小説への興味がふつふつと湧いてきた。手始めに,結構前に読んだ『玩具修理者』が今でも印象に残っているので,小林泰三の小説を手に取った。本作は純粋なホラーというよりも,ホラー・SF・ミステリが入り混じった短編集である。個人的ベストは,やはり表題作の『目を擦る女』だ。ホラー的な不気味さと,ミステリ的な謎解き,そしてディストピアSF的な絶望感がブレンドされた傑作だ。

目を擦る女 (ハヤカワ文庫JA)

目を擦る女 (ハヤカワ文庫JA)

 

引き続き,ホラー小説巡り。様々な読書ブログでオススメされていた恒川光太郎の『夜市』を読んだ。『夜市』と『風の古道』の中編二作を収録している。『夜市』はここ一カ月で読んだ小説の中でベストと言っていい。読後にこれほどの興奮を覚えたのは久しぶりだ。森見登美彦『きつねのはなし』的な不気味さと,筒井康隆『旅のラゴス』的な壮大な世界観がある。『風の古道』も良い。こちらもSF的な要素のある怪談。怪談とは良いものだ,と久しぶりに夢枕獏陰陽師シリーズなども再読したくなった。

夜市 (角川ホラー文庫)

夜市 (角川ホラー文庫)

 

続いて,同作家の『秋の牢獄』だ。中編を三篇収録している。これも,面白い。面白い。面白いのだが,『夜市』に比べると,どの作品も既知感があり,やや感動は薄れた。『秋の牢獄』は伊坂幸太郎,『神家没落』や『幻は夜に成長する』は乙一の小説と言われても納得する。もちろん面白いことが間違いないが,『夜市』ほど感動は無かった

秋の牢獄 (角川ホラー文庫)

秋の牢獄 (角川ホラー文庫)

 

ホーキング博士の『ホーキング,宇宙を語る』を読んだ。ブラックホールやビッグバンといった,現代物理学の示す宇宙観は面白い。だが,相対性理論量子力学をぼんやりとしか理解できていない私のような読者にとっては,もはやフィクションの世界の話のように聞こえる。現代物理学の最先端を理解している人間など,この世界に一握りしかいないだろう。科学の正しさが,彼ら天才達の内輪の世界で承認され,定式化されていくというのは,非現実的だし,怖いことでもある。その誤解や恐怖を少しでも取り除くために,こういった啓蒙書が書かれるのだろうが,それでも悲しいことに,凡人には彼らの見ている景色など見られないのだ。

ホーキング、宇宙を語る―ビッグバンからブラックホールまで (ハヤカワ文庫NF)

ホーキング、宇宙を語る―ビッグバンからブラックホールまで (ハヤカワ文庫NF)

 

以上が,先週中(9/2-9/8)に読んだ本である。今週は,引き続きホラー小説を嗜むことにしたい。また,北海道地震を受けて,地震の発生メカニズムや巨大地震の発生可能性を知る必要性を感じたので,地学や地震に関する実用書を読む予定である。