綴る阿呆

此処には阿呆な話しかない。

読書日記(2018/9/9-9/15)

何となく読んだ、中山元フーコー入門』。哲学の解説書としては、非常に平易で分かりやすい。筆者の本業が翻訳家であり、哲学者では無いことに由るのかもしれない。フーコーの代表作を辿りながら、フーコーの哲学・思想の概要と、その発展・変遷を解説している。絶対的な真理や正しさなど存在せず、それらは歴史的・恣意的に生じたものに過ぎないと指摘する。我々が「かくあるべき」という価値観によって、いかに自分で自分を縛り付けているかを自覚させられる。また、現代社会の学校や会社といったシステムは、凡て監獄と同じメカニズムで動いているという指摘には大いに共感する。

フーコー入門 (ちくま新書)

フーコー入門 (ちくま新書)

 

『高校数学でわかるマクスウェル方程式』は良書。仕事上、電磁気学を学ぶ必要があるため、入門書の一つとして読んだ。本当は自分で手を動かして数式を追うべきなのだろうが、ひとまず字面だけを追った。科学史や哲学にも話題が及ぶので、純粋に読み物としても十分に楽しめる。タイトル通り、高校物理の延長で、マクスウェル方程式が意味するところを大雑把に掴めた。特に、マクスウェルがいかにして「電磁波とは直交する電場と磁場の振動が波として伝わること」という仮説に至ったのかを、理解できた点が良かった。次は、一つ一つの数式を吟味しつつ、再読したい。

高校数学でわかるマクスウェル方程式―電磁気を学びたい人、学びはじめた人へ (ブルーバックス)
 

近所の本屋で平積みになっていた麻耶雄嵩『螢』。以前に読んだ麻耶雄嵩『翼ある闇』は、展開・論理があまりに荒唐無稽で、そのミステリマニアの内輪ノリ的な作風に、あまり良い印象を抱かなかった。一方で本作は、推理小説マニアでなくてもある程度楽しめると思う。結構オーソドックスなミステリだ。逆に言えば、それほど衝撃的な展開・トリック・犯人ではないので、あえて読む必要があるかと言われれば、迷う。ただし、本作でキーとなるクラシック音楽が醸し出す耽美的な雰囲気、そして読者をどん底に突き落すエピローグは良かった。

螢 (幻冬舎文庫)

螢 (幻冬舎文庫)

 

小林泰三玩具修理者』は、短編『玩具修理者』と中編『酔歩する男』の二作を収録している。『玩具修理者』の方は再読。これは傑作としか言いようがない。少女が死んだ弟を"玩具修理者"という不気味なオッサンに直してもらう話。乙一的なグロさ。そして、道尾秀介的な伏線回収の鮮やかさ。『酔歩する男』は、ホラーというよりSF。タイムリープする男の話。小林泰三の理系っぽさ(メーカーの研究者との兼業作家)が全開の作品。ラストでは完全に煙に巻かれるので、個人的にはもう少しスッキリと終えて欲しかった。

玩具修理者 (角川ホラー文庫)

玩具修理者 (角川ホラー文庫)

 

佐藤究『Ank: a mirroring ape』。乱歩賞受賞のデビュー作『QJKJQ』と同様、佐藤究氏の作品は、純文学×ミステリ×メフィスト作家的斬新さ、とでもいうべき独特の作風だ。『QJKJQ』もそうだが、まずタイトルの斬新さに、もう読まずにはいられない。そしてタイトルに劣らず、内容も斬新だ。研究所から脱走したチンパンジーの鳴き声を聴いた人間が、理性を失った暴徒と化し殺し合う、という話。あまりに独特で、他人に安易にオススメできる作品では無い。だが、壮大な世界観で、非常に読み応えのある作品だ。ただし、理系人間からすると、謎解き部分のDNAのくだりのデタラメさには苦笑を禁じ得ない。

Ank: a mirroring ape

Ank: a mirroring ape